Special Interview
プジョー・オートモビルCEOの
ジャン=フィリップ・アンパラトさんに聞く
“いちばん重要なのは、デザインです。”

取材協力/プジョー・シトロエン・ジャポン(株)
インタビュー・文/河西啓介(EIGHTH編集長) 写真/内山真

この春、日本で発売されたプジョーのフラッグシップモデル「508」。その披露に合わせて来日したプジョーブランドのCEO(最高経営責任者)ジャン=フィリップ・アンパラトさんに、EIGHTH編集長の河西がその魅力やプジョー躍進の理由を尋ねた。

懐かしく新しいファストバック・スタイル

3月下旬、新型プジョー508が日本で初披露された。欧州で言うところの“Dセグメント”に属する、プジョーのフラッグシップサルーンだ。

だがサルーンとは言っても、プジョー508のスタイリングはかなり斬新だ。緩やかな弧を描くルーフラインがテールまで美しく伸びる、真横から見るとまるで2ドアクーペのようなフォルム。じっさいはハッチゲートを持つ4ドアセダンなのだが、プジョーはこれを“ファストバック・スタイル”と呼んでいる。

このファストバック・スタイルを有名にしたのは1960年代に登場したフォード・マスタングだが、508の造形(とくにリアから見た姿)は確かにどこか旧いアメリカ車を思わせる。現代のクルマとしてのスポーティーさとレトロな雰囲気が融合した、なんとも印象的なデザインなのだ。

このプジョー508の発表に合わせて、オートモビル・プジョーのCEOであるジャン=フィリップ・アンパラト氏が来日した。フランス本国のCEOに会えるのはとても貴重な機会だ。今回は幸運にも、氏に直接インタビューする機会を得た。いくつかの質問に対して、アンパラトさんは実に率直かつ明快に答えてくれた。

再びセダンが注目を浴びる

──欧州においてDセグメントのセダンというのは激戦クラスです。その中で「508」はどんな特徴をもったクルマなのでしょうか。

「いちばん重要なのはデザインです。私は開発中に“デザイン・ファースト”だと何度も伝えました。その結果が508のファストバック・スタイルです。カッコいいでしょう。そしてプジョーのキーとなるUSP(ユニーク・セリング・ポイント)を忘れないこと。その大きな要素はロードハンドリングのよさだと思います。508はこのクラスにおけるベンチマークになるでしょう。とにかく“お客さんに試乗してもらいなさい”と言っています。そうすれば508の素晴らしさが分かってもらえるはずです」

──確かにカッコいいし、スタイリングは508の大きな魅力だと思います。いっぽうユーティリティについて、とくに後席スペースは少し狭いと感じました。それはライバルと比較したときの弱みにはなりませんか?

「デザイン・ファーストですから(笑)。私は1台ですべてを賄うというより、目的に応じて考えるべきだと思っています。家族で過ごすならワゴン、ステイタスを重視するならセダン、SUVという選択もあります。私だったらワゴンを買うかもしれませんね。今はSUVやミニバンが人気ですが、これからは燃費やデザインに優れるセダンが再び、注目を浴びるのではないでしょうか」

お客さまが“ボス”なんです

──自動車の電動化が急速に進んでいます。プジョーもやはりガソリンやディーゼルモデルに代えて、EVにシフトしていくのでしょうか。

「私が常に考えているのは“顧客がボスなんだ”ということ。つまりお客様が自由に選べる選択肢を用意すべきだと。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド、もちろんEVもあります。国、都市、規制に応じて最適なパワートレインを選べるようにします。5年前の欧州ではディーゼル車が60%、ガソリン車が40%だった。しかし今はその比率が逆転しています。時代とともにニーズは変わるし、それは顧客が決めることです」

──日本で508は成功すると思いますか?

「日本のお客さまはクルマのことをよく知っているし、品質にも厳しい。だからこそ日本市場はよいベンチマークになります。ぜひ乗ってみてほしいですね。とくに『i-Cockpit』はインパクトがあると思いますよ。小径のステアリングを操って走らせるのはとてもスポーティーですし、プジョーのDNAと言える素晴らしいハンドリングを感じてもらえるはずです。ぜひドイツ車とも乗り比べてみてください(笑)。

フレンチ・カーが帰ってきた!

のっけからプジョー508について「デザイン・ファーストだ」と語ったアンパラトさんに、僕はとても驚いた。そんな風に言い切れる自動車メーカートップなど、国産メーカーには、いや世界を見渡してもいないだろう。だがそこに唯我独尊を貫く“フランスらしさ”が感じられて、一人のクルマ好きとしてとても嬉しかった。僕らが好きだったフレンチ・カーが、帰ってきた!という気がしたのだ。

じっさいアンパラトさんがCEOに就任してから、プジョーの業績は非常に好調だ。魅力的なニューモデルを次々と発売して販売を伸ばし、この508も年内にワゴンモデルの「SW」を日本導入するとアナウンスした。また今春のジュネーブショーでは新型「208」をベースにしたEVモデル、「e-208」を発表し、電動化への対応も着実に進めている。

若い頃、黒いプジョー205との運命的な出会いがPSAグループに入社した理由だったと語る“カーガイ”のパッションに触れて、僕はこの508に乗ることがとても楽しみになった。そしてこれからのプジョーがいったいどんなクルマで僕らをワクワクさせてくれるのか、ということも。

ジャン=フィリップ・アンパラト
Jean-Philippe Imparato
1966年生まれ。グルノーブル経営学院を卒業し、1991年プジョーに入社。・シトロエンでキャリアを積んだ後、PSAグループで要職を務める。2016年よりPSAグループ執行役員/プジョーCEOに就任。