準備編⑧  前前前夜

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

2月。ファミレスや電車の中で、試験の対策本を睨みつける学徒諸君を見かける時期だ。
己のいままでの努力を信じ、幾ばくかの幸運を祈って。戦(試験)へと赴いたあの日の、緊張なんて言葉では言い表せない心境。そんな想いは、もう二度と味わいたくないと思っていた。

しかし、私はいま、それを再び味わっている。
旅立ちまで、あと3日。空っぽになった部屋を見ていると、どうにも・・・・・怖い。
シンプルに、怖いという気持ちが、いちばん強いのだ。

もう、私の帰る場所はない。外は・・・雨が降っている。

“旅に出る!”と宣言しておきながら何だが、“なんでこんなことしてるんだっけ?”なんて気持ちすら舌を出している。
荒波の如く押し寄せてくる不安を、なんとか振り払わねばならない。そんなとき、私は自分の信条というか、ポリシーをいま一度思い出してみることにしている。

私の信条・・・それは“カッコよくありたい”、だ。

幼子なら誰もが思い描く、ウルトラマンだとか、仮面ライダーを見て、“僕もあんな風になりたい!”と憧れる気持ち、そのまんまである。

そんな気持ちに、実直に従って生きてきた。

「カッコよくありたいなら、強くなくちゃいけない。よし、僕も居合道や中国武術を学んでみよう!」
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「でも、それだけじゃ足りない。私が憧れるヒーローたちは、もっと思慮深い心の持ち主だ」
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「自分の強さと同じように弱さも知っていて、周りを軽んぜず受け入れることができる、広い視野と深い思考」
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「そんなヒーローに近づくためには・・・旅に出ればいいんじゃないか? だって、旅人って映画でもリアルでもカッコよく見えるじゃん!」
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「よし、それなら私も旅に出よう!」
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「それでもまだ、足りない気がする。これじゃあただの修行者だ」
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「カッコいい人って、自分だけの譲れない何かを持っている気がする」
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「私のカッコいいと思うものは・・・サムライだろ、バイクだろ・・・」

4年前のできごと。当時の愛車、KAWASAKI Ninja400Rと共に。

おぉ、そうだった。
私がこんな妙な恰好をしているのも、旅に出るのも、それが“カッコいい”という衝動に突き動かされたからであった。(要するに目立ちたいだけなのか?)

無限になりそうな弱気のループから、ようやく抜け出せた。

お金はない。ケガをするかもしれない。達成しても何も得られないかもしれない。
それでも、この旅で証明したい。
旅って良いものだと。恰好がつくものだと。浪漫の塊だと。
旅に憧れる人を一人でも増やせる人間。そんな“カッコいい”人間になるためになら、私は・・・踏み出せる。

それじゃあ、行くかっ!

Oops! まだ旅立ちの日じゃなかった。

というわけで、写真はイメージです。