埼玉編 農村に建つ金の宮

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

「埼玉のマイナースポットっていったらね~。聖天宮なんかオススメよ」

埼玉県行田市・飲食店『たかお家(たかおんち)』にて。
行田名物だという「ゼリーフライ」なるものをかじりながら、意気投合した年配のご夫婦に埼玉のオススメを聞いてみた。

おからとじゃがいもをベースに焼いたゼリーフライ。中身はコロッケに近いが、皮がお好み焼きのように薄い。
パリパリの薄皮を噛みちぎると、やわらかな白い生地がふんわりと口に漏れてくる。ちなみに語源は「銭フライ」

「5千頭のさ、龍がいるんだよ。日本離れしたとこだから、ぜひ行ってみるといいよ!」

ここ数日で長瀞や忍城を巡ったが、どこもまぁ・・・名が知れている場所だったので、ここらでマイナーなところに行ってみるのもいだろう。5千頭の龍か・・・気になるな。

~翌日~
畑。畑、畑。どこを見ても畑ばっかりな坂戸を進む。”ホントにこんなところに豪華絢爛な宮があるのか?”と思いはじめた矢先。

・・・あった。
金ピカの瓦、ていねいに削りだされた巨大な石柱、そして極彩色に彩られた龍たち。
おぉ、スゴイ。異国の雰囲気に圧倒されながら、シャッターを切った。

ここ『聖天宮』は、中国台湾・道教のお宮だ。本尊は日々の道徳を重んじ、善行に報いる『三清道祖』さま。開祖は康國典大法師さまとのこと。
なんでもその康國典大法師は、不治の大病を三清道祖に癒されたのをきっかけに、感謝の気持ちと、ほかの人にもご利益があるようにとの願いを込めて、お宮建造を決意。
その建造地を決める際、「ここに建てろ」とお告げがあったため、日本の坂戸にこの黄金の宮殿が鎮座することになったのだ。
台湾の宮大工たちが、15年かけて建造、平成7年に開廟したそう。私と同い年だな。

台湾『観音山』で採れる5mもの一本岩を、まるごと使って掘りぬいた双龍柱。
この緻密な造詣・・・ホントに石を削ったのかと疑いたくなるほど。
ちなみに、こうした彫り物に加え、壁画や絨毯の模様など全て合わせて5千頭の龍がいるらしい
本殿の天井にあるらせん状の建築は、なんと1万点以上の木材を、釘を使わず組み合わせて作り上げたらしい。
こんなにカラフルな彩りは、日本ではあまり見られないのではないだろうか

個人的には、日光東照宮にも匹敵する豪華絢爛さだ。それでいて首里城のように異国情緒を味わえる場なのに、どうして知名度が低いのだろうか。平日だったこともあるが、お客さんはかなり少ない。

やっぱり、海外の遺産だからなのだろうか? 思えば、我々は日本の神社仏閣についてはある程度の知識を有しているが、”日本の中の海外”についての知識は少ない気がする。

この聖天宮のように、国内にいながら海外の文化を見られる場は他にもたくさんあるはずだ。そうした場に行けば、その国の人たちの在り方も理解しやすいはず。

このグローバルな時代に、日本の遺産ばかりを見て。やれあの国は嫌いだ、やれ○○○人は苦手だなどとブツブツ言う前に、こうした遺産を見てみたらどうだろうか・・・。

中国台湾の繊細かつ大胆な建築技術、それを成した信心深さに感銘を受けて。

中国武術・通備劈掛拳の套路を演じさせていただいたのであった。

聖天宮
埼玉県坂戸市大字塚越51-1
049-281-1161
10~16時
高校生以上:500円
中学生:250円
小学生以下:無料
その他料金設定あり