千葉編 元レーサーのモットー

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

正直、旅に出る直前にだって見た。それから、だいたい2週間ほどしか経っていない。
それでも。

「あ~、いざ相対してみると、存外くるものがあるな・・・。」
千葉県・蓮沼海岸。この旅、初めての海を前に、我、若干涙ぐんだり。

まだシーズンじゃないこともあるのだろう。
皆無、という言葉がピタリと当てはまるほど海岸には何もなく、蓮沼から九十九里に南下してみてもそれは一緒だった。
平坦遠浅な海を持つ九十九里はイワシ漁が盛んらしく、何かそれを堪能できる定食屋はないかと探していたところ、地元民からある情報をいただいた。
「ライダーさんか・・・。そういやこの先に元レーサーが経営してるレストランがあるよ」

というわけで、早速足を運んでみる。

ここがそう。店名は「セーナーニレストラン」。頑張ればテントを10張は張れそうな草地と、奥には・・・宿泊施設?を抱えた少し風変わりな施設である。

さて、元レーサーとは一体どんな方なのか・・・とスライド式のドアを開けてみると。
「コンニチハ!」
・・・十分聞き取れるのだが、少しカタコト具合が残る挨拶が飛んできた。声の主は、黒人男性。

「あの、元レーサーの方がマスターって聞いたんですけど・・・」
「ハイ、そうです! 私のコトですネー!」
えっ・・・あっ、元レーサーって、外国の方だったの!?

アメリカはインディアナ州出身、元ホンダのレーサーであったサマン・A・ペレラさん(右)。
過去にはレースで優勝した経験もあるという凄腕の持ち主だ。
左は奥様、ではなく話が盛り上がったお客さんです。
彼の話が嘘偽りのない真であると、店の一角に鎮座していたNSRが物語っていた。

「レーサーは一生やっていけないデショ。ケガしたら終わりだし。だから、ナニカ手に職を・・・って思ったときに、ホテルを転々としてたから、ホテルで働くことにしたの。どこのホテルでも働けるように、コックとしてね」
という、彼の先見の明がここにレストランがある理由らしい。

イワシ料理の筈だったが・・・。外カリカリ、中トロトロ、でも簡単には崩れないハンバーグを頂く。
この旅とは縁遠かったフライドポテトが舌に贅沢すぎる。値段も私には贅沢だったが。

ちなみに、奥の宿泊施設のようなものは何かと聞くと、3月22日オープン予定のゲストハウスらしい。
「でも、働いてくれる人がいなくて・・・。スタッフがいないと管理がデキナイ。だけど、建てちゃった以上やるしかないじゃん!」
先行きは不安なようだが、あくまでも明るいサマンさん。思えば、「お一人様は、立って食べるルール!」「新聞読むの、1,000円ですヨ!」と、終始ジョークを飛ばしてポジティブに振舞っている。

「暗い世の中だからこそサ、明るく笑って過ごさないとダメジャン。笑ってれば、とりあえず前に進めるデショ。」
と別れ際に語ってくれた彼の言葉は、どこか今の私に向けられているような気がした。
そうだ、私もなのだ。先行きは不安でも、やるしかないのだ。やり始めてしまったのだから。

大音量でインカムから曲を流し。無理やりひきつった笑みを作って歌い、九十九里ビーチラインを茨城方面へと快走していった。

セーナーニレストラン
千葉県山武市本須賀3813-8
0475-78-3768
11:00~21:00
https://www.seynaani.net