福島編② ライダー流花見術

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

『福島県いわき市は満開となっておりますが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、シートを敷くなどしてのお花見はご遠慮ください。どうか、映像でお楽しみください』
「楽しめるかっ! 俺はライダーだぞ! 仮にも旅人だぞっ!」

あーあ。桜見に行きたい。
こちとら、花咲く季節を楽しみに旅を続けて来たというのに。見られるのはテレビ越しの花々だけか…。
しかたがないのはわかっている。新型コロナウイルスへの対抗策“密閉・密集・密接を避ける”という観点では、人が集まって宴会する花見は無理だ。

ん、待てよ!?

そうだよ。3密しないと花見ができないなんて訳はない。ましてや私は友達がいないから…じゃなくてライダーだから、誰かと花見をするなんてそもそも不可能だ。
バイクとつかず離れず、人のいない道路の上から、もうヘルメット絶対外さないぞくらいの心持ちなら、人と会わずに花見ができるんじゃないか?
ひらめいたところで、弾むようにロケットⅢに飛び乗った。

手始めに、近場にあった小名浜・三崎公園へ様子見に。
港が望める眺望と、敷地いっぱいに植えられた桜のおかげで、例年多くの人が訪れている地元民人気の場所だ。

だがこんな時期だからか、道路はガラガラ。
もちろん邪魔にならない配慮は必要だが、こんな感じでインスタ映えする写真も撮れなくはない。バイクって細くていいな、と改めて思う。

それに当たり前だが、歩いて立ち入れない場所…道路を走ることができるのがいい。桜並木を次から次へと横目に流すのは、乗り物ならではの楽しみ方。しかもクルマと違って、桜吹雪を全身で浴びられるから、ある意味贅沢でもある。

海から県の中央に寄り、小野町の夏井千本桜。
残念ながら、まだつぼみだったが…。逆に言えば、まだまだ桜は見られるということである。

茨城県境に近い、勿来の関の公園。勿来とは“来るなかれ”という意味らしく、平安時代、北方は蝦夷の南下を防ぐために作られた関所だったらしい。
公園は短距離ながらちょっとした峠になっていて、ワインディング気分と花見が同時に楽しめた。
腰を落ち着ける暇こそないが、“バイクとお花見”というのも乙なものである。
ライダーとは元来孤独な生き物。運動不足の二輪免許をお持ちのみなさまは、ぜひ試してみてはいかがだろうか。

かつてここを訪れた平安時代の陸奥守・源義家は、その鎧に舞い落ちた山桜を見て思わず歩みを止めたらしい。
ちょうど今日も、風に吹かれ衣に花びらが張り付いてくる日だった。
1年のうちたった僅かの晴れ舞台。それを、多くの人に見てもらいたい。見てもらいたかったのに。そんな、桜の寂しげな声が聞こえたような気がした。