岩手編 武者震いの平泉

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

岩手の名勝「厳美渓」付近の国道342沿いで野宿をしていると、野太いエキゾーストノートのスポーツカーや、キンキンと高回転サウンドを鳴らすロードスポーツバイクが脇を通っていった。
“なんだなんだ? このあたりはツーリングスポットなのか??”
国道4号に戻ってもよかったが、せっかくならと翌日少しだけ付近を走ってみることにした。

散策を始めた朝もこんな感じ。国道342号をそのまま西へ進めば、温泉地やワインディングがある栗駒山がある様子。
そっち方面が目的の方たちだろうか。

西へ行って秋田へ出てしまうわけにもいかないので、少しだけ田園地帯を北上しつつ4号に合流するルートをとってみる。この平泉は中尊寺など名高い建造物がある地域であるが、ぶっちゃけ昔見たことあるからスルーしようか、と思っていたのだが・・・。

とある建物が横目に映り、思わず止まってしまう。なんだろうアレ。

バイクを降り参道を歩いて近づくと、よりいっそう不可思議な光景を目の当たりにした。
洞窟に社が埋まってる・・・。

この社の名前は『達谷窟毘沙門堂(たっこくいわやびしゃもんんどう)』というらしい。
あの軍神として有名な毘沙門天様だ。
なんでもその昔、この洞窟に惡路王といういかにも悪そうな名前の賊たちが住んでいて、付近の良民たちをいたぶっていたとか。
それを憂いた桓武天皇が、坂上田村麻呂公・・・そう、教科書で習ったあの有名人を征夷大将軍に命じ、討伐させたのだという。
見事討伐に成功した田村麻呂公は”この勝利は毘沙門天のお陰”だと言い、この社『毘沙門堂』を建てた・・・ということらしい。

いわゆる勧善懲悪。ヒーローに憧れる男の子としては、心が奮えるストーリーである。

社は何度も焼失に遭っており、現在五代目。綺麗に保たれている。
お堂は撮影禁止で、いくつもの毘沙門像が安置されている。ムンと険しい表情の彼ら全員の前に立つと、その迫力に思わず心臓がバクバクいってしまった。これは武者震いだ。
実際、源 頼朝や伊達政宗といった名だたる武士たちも崇めたというほどだから、震えるほどのエネルギーが満ちている場所なのである。
決して恐いわけではない。ぜひ行って確かめてほしい。

貧乏神が封じられているという蝦蟇ヶ池。
祀られている辨天様は金運商売、知恵、技藝の神であり、そして何より、メチャクチャ美人らしい。
さっきとは違う感じで心臓がバクバクしてしまった。
思わず100円を賽銭しようとしたら500円玉を入れてしまい、またバクバク・・・。

ちなみにだが、ここにいた悪党たちは京から姫をさらってきて監禁したりもしたらしく、東へ少し歩けば『姫待瀧』という、逃げ出した姫を待ち構えて捕えたという伝説を持つ滝もある。

捕まえられた姫は、見せしめにと黒髪を切られてしまったとか。
美人をいじめるなんて、絶対にあっちゃいけないことである。
もしそんな場面に出くわしたら、私も田村麻呂公のように勧善懲悪して、美人に恩を売って、そんでもって・・・。

そんな妄想を現実にするためにも、毘沙門天のご加護があるようにとひたすら祈ったのであった。