青森編 “橋渡りに船”の五所川原

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

北海道を走った後だと、やはり本州の道は狭く感じた。だがそれは決して不満だとか嫌だとかいう感覚ではなく、“ああ、これだこれだ”と馴染みある地に戻ってきた感触だった。

とくにこんな感じで、グネグネと道が蛇のようにのたうちながら岩壁を突っ切るようなコースに出会うと、
良い意味で“ああ、忙しい道だ”と思うわけである。

津軽半島の突端、龍飛岬から国道339号沿いに峠を越え日本海側に出ると、上のように何もない海辺を走り抜ける快走路に出る。途中にある道の駅にはキャンプ場が併設しているなど、旅人にとってはうれしい道だ。

そこから内陸へ入り込むと、今度は十三湖沿いに緑豊かな木のトンネルをいくつもくぐることになり、それも抜けると五所川原の田園地帯、北海道に負けず劣らずのストレートに出る。

海、森、田園地帯とシーンが目まぐるしく変わっていくこの道は、いちライダーとして胸を張っておすすめできる道である。

五所川原には何があるかと地図を開いてみると、なんだか溜池がたくさんある地域のようだ。それぞれの溜池には立派な橋も架かっているようで、せっかくだからその中の一つに寄ってみることにした。
どうせなら1番スゲェのを渡ってみたい。と辿り着いたのは、廻堰(まわりぜき)大溜池に架かる『鶴の舞橋』。

日本一長い”三連太鼓橋”とのことで、地元ヒバを使った白い橋げたがアーチを描くさまは、まさに鶴のようである。
天気がいいと岩木山をバックに拝めるのだが・・・残念。

耳ざわりのいい木板をブーツで叩く音を鳴らしながら、半ばに建てられた東屋(?)でひと休み。
“夜中にライトアップもされるみたいだし、彼女ができたら来よう・・・いつか、いつかな?”
と考えていると、
「あら~重そうな荷物だこと、どこから来たの?」
と声をかけられる。振り返ると、首から名札を下げた年配のご婦人が立っていた。ガイドさんのようだ。

まぁ、こんなやりとりも慣れたもので。どこから来て、何で移動してて、どう寝てて、なんでこんな格好してるのか・・・なんていつも通りのやり取りをひととおり終えると、
「晩御飯だけでもウチで食べてく?」
と、いつも通りじゃない発言が飛び出てきた。
「私、ベジタリアンだから、若い子は物足りないかな?」
「食べます!ぜひ!いただかせてください!」
二つ返事で食らいつくと、その後そのご婦人の家で前言通りの菜食定食をいただいた。
正直に言えば、私はお肉大好きなのだが。それでも幾日かぶりの“家庭の味”というのは、舌先に触れるだけで落涙ものである。

一見、お肉に見える料理もあるが、これはオカラを工夫してそれに見立てた料理。
頬張ると、本当に肉を食べている感覚で脳が混乱した。

「ありがとうございます」とバカの一つ覚えのように呟きながらご馳走を平らげると、
「ウチは散らかってて泊めてあげられないけどさ、近くに1,000円で泊まれる温泉あるから、そこ行きな!お金は出してあげるから!」
“オカネダシテアゲルカラ”??
一瞬頭が真っ白になったが、苦難の旅だ、こんなことがあってもいい!と建前をつけ甘え切ることに。

紹介していただいたのは『梅沢温泉』。住宅地にポツンとある隠れた名湯・・・というか湯治場で、珍しい“黒い湯花”が舞う湯舟は源泉ママでとにかく熱く、とても足を底までつけるものではない。が、洗面器で体にかけるだけでも疲れが吹き飛んだ。

1,000円にしては贅沢すぎる、8帖以上はある部屋の畳に寝転がると、やがて雨が軒先を叩き始める。今日はズブ濡れを覚悟してたが、
「まったく地獄から天国だ・・・」
こんな寛大な出逢いがあるなんて、夢でも見ているかのようだが。それに出逢えるのが旅なのだろう。
自分の常識や思い込みが通じない場所。そこへ行くのが、旅なのだから。