群馬編 サムライ、英国へ

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

梅雨明けを狙い、三国峠を越えて新潟から群馬へと至る。
雨でずぶ濡れにならなくて済むのはありがたいが、待ってましたとばかりに夏らしい日差しがヘルメットに突き刺さってくる。少しでも暑さから逃れようと、沼田から高山村方面へと山道を流していると・・・。
「おっ!?」
日本の山道に似つかわしくない光景を目にし、思わずブレーキをかけた。

「城だ・・・」

ここは、ロックハート城。
かつてイギリスはエディンバラにあった古城を、シベリア鉄道の手を借り3年余りの歳月をかけてここ群馬に移築した、正真正銘“本物”の英国の城である。
図らずもトライアンフをイギリス建築と共に画角に収められ、小躍りしつつ入場、いや入城した。

「こりゃ凄い!」

思わず感嘆する。
入場口をくぐれば瞬く間に周囲を英国建築が取り囲み、庭園を歩けば、植えてある草花によるのだろうか、確かに日本のものではない香りが身を包む。
どこへレンズを向けても絵になりそうな景色に、シャッターが止まらない。
この美麗さはスタッフのみなさんが入念に手入れしているからだろう。見学中もせっせと手を動かす人々がおり、目が合うと挨拶してくれた。

一帯にある喫茶店やお店なども、みな英国を思わせる様式・・・というかこれはもう、完全にイギリスだ。
こんな格好をしているのにも関わらず英国文化は好きなので、思わず同じ道を何往復もしてしまった。

近くで見ると、さすが本物。けっこうな貫禄と威圧感を感じる。
かつてロックハート家の祖先サイモン・ロッカードは、スコットランドの英雄ロバート王の心臓をバレスチナに埋葬する命を受け、十字軍による戦火の中、鍵をかけた小箱に心臓を入れて守り抜き、使命を全うしたそうだ。以来、家の紋章には“鍵に囲まれたハート”が刻まれるようになり、家名もロックハートになったのだという。カッコいい・・・。

城内に入れば、いかにも格式高いといった感じのブリティッシュインテリアを目いっぱいに拝むことができる。ラウンジに腰を下ろせば、気分は英国貴族だ。
城を建てたウィリアム卿はグラスゴー大学の学部長でもあった人物らしく、またその弟は文学者でもあったとのことで、貴重な本を納めた書斎などもあったりする。
女王マリア・テレージア直筆サイン入りの勅赦状などお宝もあるのだが、それはぜひご自身の目で。

こちらは写真付きで紹介したいお宝。
クルマ好きなら垂涎モノだろう、ダイアナ妃の御料車として使用されていた1988年式ロールスロイス・シルバースパーと、
恐らく日本唯一の現存となるプジョー201だ。

この城が日本に移築されるキッカケは、俳優の津川雅彦氏が“父と子の愛を形にしたい”と夢みた「こどもの国」建設計画にあるという。
その中核となるサンタの城を“本物のヨーロッパの城にしたい”と熱望した彼は、英国政府に熱心に頼み込み、移築の許可を得たそうだ。ヨーロッパの古城移築は日本初のことだといえば、彼の苦労の深さがうかがい知れるだろう。

敷地内にレストランや豊富なミュージアムがあることから、半日ほど滞在してしまったロックハート城。
英国名家が子供、そして動物も心地よく過ごせるようにと設計し、日本の俳優が子供たちのためにと想って迎え入れたこの場所で、彼らの愛を感じてみてはいかがだろうか。