富山編 海の見えるまち

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

「いやいや、夏こそ山を走るべきですよ~。海沿いを走ったって、日が当たって暑いだけじゃないですか~~!」
・・・と、以前バイク乗りとの間で、私は話していた気がする。

若かったな。

群馬、長野、岐阜。日本内陸山続き三県。
「海。海が見たい・・・。青々とした海が!」
海のそばで生まれ育った私にとって、限界が近づいていた。暑いのはわかっている。それでも、人は夏に海を見たいものなのだ。その青に涼を見い出す生き物なのだ・・・!

んな訳で、富山に入ってからは海へまっしぐらだった。
街を抜け、畑を横切り、潮風に鼻がヒクつきはじめると・・・ついに青い水平線が見えてくる。

うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!

思わずスタンディングでハンドルを握る。
魚津の『しんきろうロード』。春と冬には、蜃気楼がほぼ確実に見えるという稀有な地だ。
もちろん今の時期は見ることができないのだが、今そんなことはどうでもいい。海が視界を覆いつくしているだけで、満足だった。

富山では言葉通り、海沿いを東から西へと走ることにする。
予想していたとおり暑いが、走り続ければ風がそれを吹き飛ばしてくれる。ライダーの特権だ。
渋滞に引っかかってしまったときは、道の駅でもコンビニでもなく、ドラッグストアに寄る。100円以下で買えるドリンクとアイスを買って、軒先で涼を得るのだ。
ちなみに道の駅のアイスクリームは、私が見てきた限り相場は300円。それより安ければ、買いだ。

西は氷見へ行けば、このように海と触れあえる公園も点在する。
個人的な意見だが、富山は海と人の調和をうまく落とし込んだ公園づくりに長けている気がした。

散々海沿いを回った中で特に印象に残ったのは、射水にある海王丸パークである。

その名の通り、昔、練習用帆船として活躍した海王丸が眠る公園である。
バックには延長約3,600mという巨大な新湊大橋が架かっており、見て楽しい、走って楽しいという場所。広い園内には遊具もあるため、子供連れでも楽しめそうだ。

ほのぼのした場所なのだが、実はこの公園が真価を発揮するのは日が落ちてからである。

野営をしながら、日が暮れるのを待つ。夏場だからなかなか暗くならないが、のんびり待とう。
飯は相変わらずの納豆ご飯だが、ちょっぴり贅沢なロケーションのせいかいつも以上に旨く感じた。

テントに寄りつこうとするフナムシと戦いながら時を過ごすと、辺りはようやっと暗闇に。そして、海王丸の方からぼぅっと明かりが見えてきた。
“待ってました”と、その光の方へ歩み出す。

そこには、昼間とは打って変わって、オトナな雰囲気漂う夜景が広がっていた。

「これは・・・ウットリしてしまうってやつですな」

お台場なんかで見る夜景も良いが、あっちはちょっと元気すぎる。こちらは工業地帯の暗闇の中、ポツンと輝いているさりげなさになんとも癒される。
仕事で疲れた時に、フラリとやって来てコーヒーでも飲みたくなるような。心の安らぎの場。
・・・あとはまぁ、デートスポットとかにも良いんじゃないでしょうか、ハイ。

練習船として、地球を約50周したという海王丸。その光は優しくも、その姿は歴戦の旅人としての風格を示していた。

「私もいつか、少しでも。あんな風に、雰囲気が出たらカッコいいんだけどなぁ・・・」

旅人の大先輩を憧れの眼差しで見ながら、しばらくその場に腰を下ろす。
今晩は、寝不足になりそうだ。