石川編② 余暇

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

放浪旅。それは・・・お金をかけられないものである。
夜を越すことについても同じ。宿なんてふつうは取れない。基本、テントだ。

“キャンプ”なんて言うと「楽しそう~」だなんて思われるが、勘違いしないでいただきたい。キャンプには、いわゆるインスタ映えする“オシャレキャンプ”と、生き残るための“サバイバルキャンプ”がある。私がしているのは、当然後者だ。

ある晩は持ち主に頼み込んで、田んぼの入り口にテントを張らせていただいたり。

ある晩は豪雨でテントを張れず、道の駅の24時間休憩スペースに寝床を作らせていただいたり。

食事だって、シャレたものじゃない。
毎晩、お湯で作る冷凍飯に納豆をかけ、それにインスタント味噌汁を付け合わせるだけ。
椅子なんて荷物になるから持ってないし、アスファルトに座りながら箸を運ぶことは当たり前。山の中では、アブに追っかけられながら歩きつつ食べたこともある。
道行く人に、奇異の目で見られるのは日常茶飯事だ。

だが。だがね。たまにはだ。

こんな日があっても、いい。

ここは、『見附島シーサイドキャンプ場』。
その形から“軍艦島”とも呼ばれる見附島を眺めながら、穏やかな波打ち際でキャンプできる素晴らしい場所だ。
入場料・サイト料・車両乗り入れ料含め、1,600円。出費ではあるが、たまにはこういう日がないとやってられない。

お金を払っているから、誰かに文句言われないかとビクビクしながら設営する必要もない。闇を待つ必要もない。

ハンモックを吊るすのに気兼ねする必要も・・・ない!

実は密かに持ち歩いていたヘネシーハンモック。やっと陽の目を見る日が来た。
蚊帳付きなので虫に悩まされることもなく、蒸し暑い夜もそよ風に揺られながら眠りにつける。

この旅では絶対に買うことのなかったアルコールを買ったりして、“旅”という非日常の中での、さらなる非日常という、よくわからん状態に酔いしれる。

いくら、見たことない景色や美しい景色が見られるといっても、長旅というのは辛いものだ。
自分の体調やバイクの調子を鑑みながら、今晩の寝床を考えつつ、食事や洗濯なども視野に入れてルートを探る。良いことよりも辛いことの方が多いと言っても、過言ではないだろう。

日常生活でも“息抜き”というのは必要なので、今回私も思い切ってそれを実行してみたのだが・・・。それはそれで、この旅路が“日常生活”と化してしまっている証になっていることに気付き、なんだか複雑な気分になってしまう。

「いや~もう、なんでバイク旅で食うカップ麺って旨いんだろ~ね~」

日が暮れ始めると、ついつい名残惜しくなってしまう。
今日という余暇が、終わってほしくない。

おかしいな。
旅に出るときは、日常のしがらみから解放されるつもりだったのに。いまとなっては慣れてしまい、旅が日常になってしまっている。余暇だったはずの旅で、苦労ばかりが目についてしまっている。

「旅人になるって、こういうことなのかな・・・」
“明日は、どこにテントを張って寝るんだろうか?”
ハンモックに揺られながらそれを考えると、なかなか眠れなかった。
なので、“明日は、どんな景色を見られるんだろう?”と考えながら目を閉じることにした。

すると・・・不思議に明日が楽しみになるのだ。