石川編 何もないパラダイス

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

「青いっ!」

富山からそのまま海沿いに石川へ入れば、同時に能登半島へも踏み出すことになる。カラッカラに晴れた空を映し出す海の美しさは、能登になっても健在だった。
違う点といえば、富山は波止場が公園になっていたりと人気を感じさせるものだったのに対し、能登の波止場にあるのは漁師の小舟や漁村、ぼら待ち櫓・・・と、“何もない”様相を呈している点。その飾りっ気のない景色が、海をさらに青く見せてくれる。

海岸沿いのブラインドコーナーを越えても、越えても。先にあるのは山の緑と海の青。そんな時間は贅沢ではあるのだが、一つ難点もあった。

「今晩、何処に寝ようか・・・」
何もなさすぎて、寝床にできそうな整備された緑地なんてものが見つからない。
昼過ぎになって焦り始めて地図を開くものの、公園のようなものはない。
“こりゃあ下手したらベンチで寝るしかないかも・・・”と腹をくくり始めたころ、九十九湾にある施設を見つけた。
「ぴーす・・・・・・ライダーズマリン・・・・・・、ライダーズハウスか!」

『PEACE Riders Marine Base』か。
“古ぼけた民家って感じだな”なんて思いながら入ると、内装はけっこう手が入れられていて綺麗。見とれていると、小麦色の肌をした銀髪壮年の女性マスターが、元気のいい声で出迎えてくれた。

「そっかぁ、ずっと山ばっかで海が恋しかったんだね(笑) 表出てみてよ!すっごくキレイだから!」
「はぁ・・・」
言われるがまま掃き出し窓を越えてみると、

お?
すごく失礼だが、古ぼけた玄関口とは全く異なるリゾート模様。
堤防に近づいてみると・・・

「うおぉぉぉぉぉっ、スゲェ~~~~~~!」
まさかのプライベートビーチが広がっていた。
嬌声が聞こえたのか、マスターが後ろからやってきて
「よく見てごらん、泳いでるお客さんもいるでしょ。あなたも泳いでもいいよ!」
と声をかけてくれる。
くぅ・・・、水着は持っているが、潮水を手早く処理する手段は、ない・・・!

マスターの大場さん。自身もハーレーなどを駆るライダーで、
昔は出身地である金沢から、能登半島までよく走っていたそうだ。
だが能登は1日で周るにはいささか広く、“ここに休める場所があったら”との想いで本施設をつくったそう。
ちなみにシェフでもあり、料理は絶品。

入場料1人とテント1張り分で、1,000円。
今日はここで寝ることにした。

夕暮れに赤く染まる水平線を眺めながら、マスターと暫く話す。
「私もいつか家を建てるとしたら、海の近くって決めてるんですよ。マスターはそんな私の夢を体現しちゃってますよねぇ。羨ましいなぁ」
「アタシも海だーい好きだからねぇ。それを、大好きな能登で叶えられて良かったよ。能登は、なーんもないところだけど、それが魅力だよね。自然のままを感じられるというか、不便さを楽しめるっていうかさ・・・」
そんな不便さに本日ちょっと苦慮したというのは、内緒である。

だが、本当にそうだ。ライダーは走る生き物。立ち止まる場所などなく、ただひたすら自然を眺めながらアクセルを開けていられれば、幸せってもんである。そういう意味では能登は絶好の場所だ。

堤防に寝ころび、満天の星空、天の川をひととおり堪能したら、テントに入って、寝る。

そして起きたら、また走り出す。
あそこに泊まって、良かった。
なんだか、ライダーとしての歓びが何たるかを、思い出せた気がする。

PEACE Riders Marine Base
石川県鳳珠郡能登町越坂1-1-5
0768-74-0566
https://www.tomi3peace.com
営業時間 11:00 〜 20:00
定休日 毎週月曜日(祝日の際はその翌日)・第4日曜日
テントサイトのほか、ドミトリーやグランピングも有
詳しくはホームページを参照