福井編 鯖街道

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

福井は、縦に長い県だ。
県庁所在地の福井市は県の北側にあり、その周囲には東尋坊や恐竜博物館があったりと見どころも多い。
だが、そこから敦賀を越えて三方五胡を見送り若狭に入ると田舎風景が続き、正直 “バイク止めなくてもいいかなぁ”状態になってしまう。

そんな中辿り着いたのが、小浜町だった。

決して“街”ではないが、小ぶりな人魚浜を抱えたここは隠れたリゾート地といった様相。入江に揺れる小波が、良い青のグラデーションを描いている。少し、散歩してみたくなった。

小浜町は歴史的な町並みを残す取り組みを行っているようで、蔵や出格子を備えた木造建築が多くみられる。金沢や京都のように人が多いわけではなく、地元のおばちゃんやおじちゃんが自転車に乗ったり、談笑したりしている。そんな、のんびりとした地である。

なぜ浜の名前が“人魚浜”なのか? それは流れ着いた人魚を食べ、
不老長寿を得た八百比丘尼(やおびくに)伝説がこの地に残っているからである。
彼女はその長寿を以て諸方を旅し人助けをした後、ここに入定した。
さて、かくいう私はこの生涯でどこまで行けるだろう?

町歩きをしていると、気になる文字を見つける。
“鯖街道起点の地”
「サバとな・・・?」
気になって、港にある『おばま食文化館』へ出向いてみた。

館内は小浜だけでなく、伝統的な日本食についての展示が豊富。
ちょっとした食品サンプルミュージアム状態であった。
また温泉も併設されており、人魚伝説の元となったジュゴンが食べる甘藻を使った、“緑の湯”にも浸かることができる。

正直何もないと思っていたところに、見応えのある博物館があって舌を巻く。
「なるほど。ここから京都へ鯖を運んでいたのか・・・」
なんでもここ小浜で獲れた海鮮物は、馬や荷車、もしくは背負っての徒歩旅で、山を越え、野を越え、京都まで運ばれたのだという。中でも特に名品とされたのが鯖だったので、当時使われていた交易路を“鯖街道”と呼ぶに至ったのだという。

「ああ、何だか鯖が食いたくなってきたな~」

なんでも京都に着くころには、鯖がいい塩加減になっていたらしい。
それに少しでも近づこうと、鯖街道の一つ“若狭街道”を南下し、滋賀との県境に近い熊川宿に至った。

長野の妻籠宿などと同様、宿場の街並みが残っている熊川宿。
鯖街道の休息点としてはもちろん、織田信長が朝倉義景を攻める際、
秀吉と家康を連れて泊まったなど、歴史好きにも見逃せないスポットである。

その宿場町の一角・・・ではなく、道路を挟んだ向かいに“サバカフェ”なる興味深い店名が見えたので、入店。イチオシだという「サバサンド」を注文してみた。

フランスパンにサカナ?と思うかもしれないが、意外や意外、これがまた合う。
噛めば脂が滴り落ちる鯖は、まるでハンバーガーのパティのようで違和感がない。
若狭特産の柑なんばを使った酸味のあるソースも、上手くパンと鯖の橋渡しをしてくれている。(税込1,155円)

京の方々に先がけて名品を食べていると思うと、なんだか誇らしげな気分になってしまった。
田舎だなと思っていたが、面白い発見があった。
考えてみれば、都に並べられる美品名品は、み~んな一見何もないような場所から送られてくるんだよな・・・。まさに、「地方があるから都会が成り立つ」のである。

“京は遠ても十八里”と言う若狭民たちの言葉には、都と自分たちは遠くともしっかり繋がっているんだぞという心意気が詰まっている気がした。