島根編 星を抱く山

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

「石見銀山は駐車場からけっこう歩くのかぁ…」
おまけに、ユーレイが出るという噂もある。
心霊系はちょっと苦手なんですよね…。
なんて呟きながら、出雲から国道9号線を南下。江津市に入った。

江津は、鉄道だと東京から最も時間がかかる場所なのだという。ある意味、東京から最も遠い場所ということ。
思えば遠くまで来たもんだ…。江の川を渡りながら感傷に浸る。右を見れば海、左を見れば山。
ん?
山肌に、少々目を疑うような光景が見えたので思わず停車してみる。

おわかりいただけただろうか。
そびえたつ山の頂付近に、でっかい“★マーク”がある。
「あ、あれはまさか……っ! 宇宙船の着陸場所………!」
東京から最も離れた町で、人目を忍んでアメリカみたいなことやってたのか! これは調査せねばなるまい…。
山へ向かってハンドルを切った。

甍(いらか)街道なるちょっとした古い町並みを見学しつつ、山へ。
出会ったおじさんに「今日は駅でA1グランプリっていうカートのレースがあるよ」
と教えてもらったが、今はそれどころではない。

道を進んでいくと、山方面に看板が立っている。
「←島の星山」
なんてメルヘンな地名なんだろうか。しかしそんな子供騙しには惑わされないぞ、政府め…!

中腹辺りまで上ると、★マークの巨大さがひしひしと伝わってくる。
草で形作っているようだが、だとすると定期的な手入れが必要なハズだ。
秘密裏に誰かが出入りしているに違いない。そしてあの電波塔は宇宙人との交信用なのだ。

付近では、ここはかの有名な万葉歌人・柿本人麻呂が晩年を過ごした土地であり、その自然や景観が詠われたという情報が得られたが…。きっとこれはカモフラージュだ、もっと別の由緒があるに違いない。

山道を行けるところまで行こうとしてみたが、途中で目に見えて幅が狭くなったので、一旦停車。その場にあった『島の星山 椿の里』という公園へ入ってみた。
山肌に沿って急坂が目立つ公園は、その名の通り世界中の椿を集めた場らしく、それらがちょっとした迷路を形作っていてなかなか歩き甲斐がある。それを抜けて、木々が頭上を覆う山中に入り込むと…。

う。
どう見ても人が居なさそうな家屋が…。
近づいて確認してみると、ここは冷昌寺というお寺だそう。そして付近には、「隕石落下跡池」との看板が。
「あ~~、なるほどね」

つまりは、そういうことなのだろう。ここはかつて隕石が落ちた場所であり、それに縁を見出した人々は一帯を島の星山と名付け、山肌に★マークを象った、と。

この窪地が隕石が落下した場所らしい。立ってみると、確かに何かエネルギーを感じるような…。

寺の脇には“隕石大明神”なる小さな社屋があり、その中には件の隕石が安置されている。写真は敢えて載せないが、ひ〇子まんじゅうのような奇異な形で、触ってみると何故かフワフワするそれは地球のものではない感じがした。

それにしてもこの山に入ってから、車どころか人っこ一人とも出会っていない。
「隕石がある場所なのに、人気がなさすぎないか?」
そう考えた途端、なんだか妙に怖くなってきてしまった。寺の裏には頂上へ続く登山道もあったが……。

「………」

いやいやいやいやいや。
ダメ。
ムリ。
絶対ムリ。

なんかゾワッとくるものを感じる。
確たる根拠はないが、ここに長居したくない。そんな本能の訴えに従い、そそくさと山を下りた。