福岡編 ごった返しの九州玄関口

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

台風12号の発生を聞いたのは、山口にいたときのことであった。
「前の11号は京都にいたから良かったけど、今回はモロ福岡到着とかぶりそうだなぁ…。さすがにホテルに頼ろう」
と、すぐさま北九州のホテルを予約した。のだが…

「メチャクチャ晴れてるじゃねーか!!」
蓋を開けてみれば、台風は東に逸れていってしまい見上げれば雲一つない空が見える。
くっそー、ホテル代無駄にしたか…。
モヤモヤした気持ちのまま、関門トンネルを潜ったのであった。

北九州の街は大規模な工業地帯。
高塔山に上れば、東京や函館といったオフィス街、観光街とはまた違った大パノラマが望める。
山道が急だったので私は見送ったが、夜景も格別とのことなので、ぜひ訪れてみてはいかがだろう。

宿泊をキャンセルするのもなんだか癪だし、今日はこの北九州を見て回ることにしてみた。上の写真だとゴチャゴチャしていてバイクで走りにくそうだが、国道495号を西へ響地区へ行ってみると、車通りが少なく直線で、快走できる工業道路を愉しむことができる。

「台風のバカヤローーーー!!」と叫びながら、アクセルを思いっきり開けて突っ走る。
伸びるフロントフォーク、後ろに置いてかれる体、響く轟音。

うーん、これは直線番長にとっては垂涎ものの道ですなぁ…。
平坦な工業地帯を吹く風を浴びながら、トラックを横目に走りまくっていたらいくらか気が紛れた。昼も近くなったし、ホテルにロケットⅢを置いて飯探しとしようか。

都会のホテルは駐車場がない場合が多く、“付近のコインパーキングを使ってください”なんてことはザラにある。
だが、「バイクなんですけど…」と言うと結構、空きスペースに停めることを許してもらえるものだ。
是非、電話する際は試してほしい。

地元の人にこの辺の名物を聞いてみると、“旦過(たんが)市場に行ってみるといいよー”とのこと。私が泊まる小倉のホテルからけっこう近いな、行ってみよう。
モノレール横切る小文字通りを歩き、遠くに小倉城が見えてくると、ビルとビルの間に続々と人が入っていく様子が見えた。
「んん? 裏道みたいな場所だぞ? なんでそんなところに人が…。まさかそんなところに市場があるわけな……」

あった。

角を曲がると別世界。やや暗く灯る電灯の下に、いくつもののぼりが掲げられている。その中を奥様方をはじめとする人々が行き交い、呼び止めようとする九州弁がそこかしこから聞こえてくる。
人の波に押され歩いてみると、魚屋に肉屋、八百屋に惣菜屋、花屋やパン屋、カフェまで…なんでもありの無秩序な場所であることがわかる。
そして、値段も無秩序だった。

「コロッケ1個80円!? この大きさで? この美味そうなツヤのホタテ1パック600円かよ!」
「お兄さん、ギンパ1本いかが? 500円!」
「あっ、おひとつ頂きます!」
買いだ、買いだ。これは買わねば。貧乏旅行者には願ってもみないスポットである。
レジ袋有料なんて知るかとばかりにどこも袋に品物を入れてくれ、ホクホク気分でホテルに戻るのであった。

後から知ったが、この市場は戦後からあるらしく、当初は闇市のような場所だったそう。
それも実はあと1年ほどで再整備のため取り壊されてしまうとのことで、残念極まりない。もし機会があれば、ぜひあのクーロンズゲートみたいな雰囲気を味わいに訪れてほしい。

~~

そして1日の締めくくりは、同じく小倉にあった『ガンダムバー サイドシックス』で迎えたのであった。
少々ジオン傾倒なガンプラたちに囲まれながら、ガンダム談義に華を咲かせいつもの就寝時間は過ぎ、夜は更けていく。

工業地帯に闇市にガンダム。
なんだかてんでまとまりのない、1日を過ごしたのであった。