沖縄編 駆け抜けろ南国

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

鹿児島新港より沖縄・本部港まではフェリーで約1日かかる。出発したのが18時だから、到着したのは翌日16時半ごろ。
沖縄のシンボル・青い海は出迎えてくれず、海はただ夕陽を受けて銀色に光っていた。
仕方がないので、人がいなくなった大宜味の道の駅で一晩を過ごす。

起きて、さぁ本番だ。

実は、沖縄でやってみたいことがあった。
昔、沖縄に住んでいた友人に
“沖縄(本島)なんて1日あれば一周できますよ”
と聞いたことがあるのだが…。
それ、本当なのか? できるのか?
今日はそれを、試してみたいっ!

中国武術の朝練を済ませ、8時45分。道の駅を出発する。
海は紺から碧への美しいグラデーションを満遍なく描いており、風も強くはなく、快晴。
もう、最高だ。
沖縄本島の周囲は476km。このまま時計回りに快走を続けていけば、余裕で周れそうである。そう、走り続けていればだが………。

「できるわきゃねぇだろーーーーーーー!!!」

走行開始からわずか20分、鏡地ビーチで早速足止めを食らった。
いや、これは立ち止まらなければ絶対損というものである。
なにここ……天国?

透明な波を写真におさめたり、その波が貝殻を揺らす音をニヤけながら聴いたり。
座り込んでじーーっと海を眺めたりと、実に1時間も砂浜に滞在してしまった。
いけない いけない…。

11時過ぎ。本島最北端の辺戸岬に到着する。
ここまで来ると人工物はほとんどなくなり、見えるのはゴツゴツとした岩と南国風の樹木のみ。どこか稚内に通ずるものがあった。

ここからは県道70号でやんばる国立公園を突っ切り、島の東側に沿って南へ向かう。

国立公園で見えるのは、ただひたすらに青い海とジャングルじみた深緑。
あとはたまに警備員が立っている米軍基地のゲートのみ。
道路沿いには飲食店がまったくなく、ガソリンスタンドにいたっては一つしか見かけなかった。
距離自体は長いので、前もっての給油は必須だ。

国道329号に合流し、宜野座で遅めの昼食を摂るころにはもう14時過ぎ。

甘く見ていた。

島自体は小さく見えるが、道はけっこうグネグネしていて長い。
まだ半分以上あるけど、これ大丈夫か…?
那覇はおろか沖縄市ですでに渋滞もキツくなり、時間はどんどん過ぎていく。

さすがに何も見ないのは味気なさすぎるので、首里城跡。
本来ならばここに、絢爛なその佇まいを見られたはずなのだが……。
空が朱く染まって来て、悲しさが増す。同時に焦燥感も増す。ヤバイって。

首里城公園から国道331号に出て、南端の糸満市をグルリと走行。ひめゆりの塔にも一分だけ寄って手を合わせ、再び那覇市に入る事には……もう…。

18時40分。夜だった……。
が、那覇市街は想像以上に深い街並みで、これはこれで夜景を楽しめる。
とくに豊崎では、タイミング良く那覇空港に着陸する飛行機と並走することができ、思わず雄叫びを上げてしまったしだいである。

もちろん、そんな七色の街灯たちも名護へ走るにつれ消えていき、やがては街灯一つないバイパスへと誘われていく。
ヘッドライトだけを頼りに、闇の中、沖縄の星を眺めながら走り続け…。

「ヴあああ…腰がいてぇーーーーー!!!」

20時44分。約12時間越しに、大宜味に戻ってきた。

うん、わかるよ。
バカである。

せっかく高いフェリー料金を払って沖縄に来て、数時間を真っ暗闇の中走って過ごすとは……。
だが、良い思い出にはなった。

旅というのは、時に打算ではなくノリで楽しむことも必要である。
良い笑い話こそ、最高のお土産なのだから。