鹿児島編 この日本の片隅で

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

「けっこう長いな……」

大隅半島。
それはまさに、日本本土の“隅っこ”に位置する半島である。
今日はそのさらに隅っこ、本土最南端である佐多岬に行く予定で桜島から走り続けているのだが、長い。
走れども走れども、半島の陰は霞んで見えた。

「北海道に比べりゃ小さい 小さい」なんて余裕ぶってた頃が懐かしい。
1時間半はゆうに超えただろうか。バイクのために小休止を入れたいが、体はまだ元気。どこか、観光地でもないだろうか…と探していると、「←雄川の滝」なる案内板が。
チラッと見えた看板の写真は、けっこうイケてそうな光景だ。
どれ、ちょっと寄り道してみるか…。
と、国道269号から離脱して約20分後。

絶賛 後悔中。

「ヤバイ。ヤバイかな、これは…」
県道○○とかいう名前もついていない場所へと誘われ、道幅は自動車1台が通れるぐらい。木々の背はどんどん高くなっていき、細いくせに曲率がそこそこある区間も。
まぁ、なぜか舗装はきちんとされてるし。行けるとこまで、ね……?

そんな道なのに対向車はそこそこおり、道を譲りながら10分も走ると開けた駐車場に出られた。信じられないがカフェなんかもあって、けっこう人がいる。
駐車場誘導のおじさんから、「滝まで20分は歩きますよ。けっこうアップダウンもありますが…、荷物、預かりましょうか?」との進言。滝までは徒歩のようだ。
遊歩道入り口を覗くと、高齢者や子どもの姿も見かける。こちとら“高齢者・子供立ち入り禁止”と言われる金華山・馬の背登山道だって登ってきたんだ。
「慣れてるんで」と、バックパックを背負った。

確かにアップダウンがそこそこあり、左右の勾配もある遊歩道だ。だが、キレイに舗装されている分序の口。
それよりも、渓谷の底に伸び伸びと息づく草木を眺めるので忙しかった。

中腹あたりを過ぎると、碧みを帯びた清流がすぐそばに流れ始める。
「これは沖縄では見られなかった水だな…!」
本土は本土で美しい水がある。その事実になぜだかホッとしながら歩き続けると、おじさんの言った通り、20分ほど経ったその時、不意に視界が開けた。

おぉ…。

想像以上。

空から落ちてくる滝を主体に、段を刻む奇岩の隙間からいくつもの水が流れ出ている。それらが溜まる岩陰は、なんとも形容しがたい彩色をたたえ、手前には、星を思わせるような白浜が。
「ゲームに出てきそう…」
息を呑んでやっと絞り出した言葉は、そんなだった。
“どんな感想やねん”とセルフツッコミを入れるが、ここは本当に、幻想の世界としか思えない…。
半島の最南端へ行くことも忘れ、しばらく足が釘付けになってしまった。

~~

その約2時間後。

「最南端、来たぞォーーーーーー!!!」
宗谷岬にも行ったから、実質、“日本縦断”という旅は成し遂げられたことになる。
もちろん目標は違うので、達成感は半々なのだが。

「あとは、ひたすら北上だ…!」
振り返りそう呟くと、熱が満ち満ちる。
きっとこの方角にあるんだろう…ゴールが。
待ってろ、東京――!