大分編 宝の山

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

大分。
といえば、温泉だぁ!

湯煙上がる別府市街、由布岳望む湯布院温泉に、どれほど行ってみたいと思っていたことか。
手始めに今日は、湯布院の温泉に浸かりたいと思うっ!

別府から湯布院へ。由布岳を望みながら早朝の寒気を切り裂き走る。
温泉しか目に入っていなかったが、県道11号・やまなみハイウェイは恐ろしく気持ちのいい快走路である。
温泉客だけでなく、ライダーとも多くすれ違った。

まだ人で混みあわない観光街……湯の坪街道を軽く流し、駐車場を探す。
「えぇーっと“湯布院 バイク”っと……ん?」
検索エンジンにワードを打ち込むと、気になるページリンクが上がってきた。

“貴重なバイクや世界のクラシックカーが貯蔵される、岩下コレクション”

観光街とはいえ、いっちゃなんだがこんな山奥にバイクの博物館が?
温泉が開くまでにはまだ時間があるので、ちょっと立ち寄ってみることにした。

5分ほど走って到着。うーん、パッと見、古びた倉庫にしか見えないけど…。
眺めているとスタッフの方が出てきて、「どうぞ~」と声をかけてくれる。
まぁ入ってみるか。

…と若干ため息気味に入館した1分後。
「だ……、ダイアナ妃結婚記念の特別限定トライアンフだと……!?」

ポンッと、とんでもない物が置いてあった。
え? え? これってこんな風に置いていいものなのか…?!
固唾を飲みながらさらに奥へ進むと、もう、言葉にできない光景が。

「なんだココ……」
アサヒ号にキャブトンが、ホンダのバタバタにラビットが、4気筒の先駆けとなったドリームCB750FOURが、あのポップヨシムラ本人がチューンしたヨシムラホンダCB77が……!
所狭しと並べられているッッ!!

日本勢だけでなく、モナークだとかライラック、イギリスのノートンやロイヤルエンフィールド、中国の長江やブラジルのアマゾネスまで…!
ああっ、一台一台、写真付きでご紹介できないのが心苦しい!

もちろん車もあるぞ! 見てよコレ、ロールスロイスの王侯貴族専用車ですよ!
他にも初期型ビュイックとか、フェラーリテスタロッサまで陳列されている。

ここ、岩下コレクションは、30歳より収集をし始めた岩下洋陽氏によって創設。実に今まで20年もの間、訪れる人に在りし日の浪漫を見せ続けてきたそうである。
22歳でプレス工場を始めた彼は、ただただ工場を大きくしていくことに“これでいいのか、正しいのか”と疑問を抱き始め、理想の仕事を追求し始めた。
その仕事の条件とは、
・好きであること
・社会性があること
・やりがいがあること
・誰もやっていないこと
・誰もマネできないこと
・文化性があること
・いろんな人に会えること
・いろんな地域に行けること
・努力すれば自分でできること
・今までの仕事の経験を生かせること
の十箇条であった。
それにピタリと当てはまったのが、“世界の旧車ミュージアム”という前人未到の行為だったという訳である。

彼の十箇条は、現代人にも広く適用されていい…と思う。
岩下氏が集めた一点一点を眺めながら、“自分にしかできないこととは、なんだろうか…”とひっそり考えさせられていた。

コレクションはバイクや車に限らず、昭和の家財道具や海軍陸軍の軍刀、皇室で使用された略式十二単にイギリスのバーカウンター、はては戦闘機など、留まることを知らない。

乗り物好きとか、昭和生まれとかじゃなくても、この異様とも呼べる空間は絶対に誰しもが楽しめる場所だと、自信を持っていえる。
“大分に、いや九州に来る機会があったら、是非とも行ってみてくれ!”って、帰ったら皆に言おうっと。

そう心に決めて、口許を緩ませながらその場を後にしたのであった。

あっ温泉忘れてた!