香川編 This is Japanese “KOSHI”

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

高松城を通り過ぎ、瀬戸内海に面する桟橋までやってきた。
地図で確認してみると、本土はそう離れていない。目の前遠くに見える影が、岡山だろうか。

「小豆島にも、行ってみたいもんだが…」

フェリーにロケットⅢを載せると、片道約2,000円。決して高い料金ではないのだが、いまはもうそれを払う余裕もない。
気が付けば穿いていたカンフーパンツにも穴が空いており、そこに流れ込む海風がスースーして冷たい。……いよいよもって“みすぼらしい旅人”ってカンジ。

ま、陸路にだって気になる場所はおおいにある。今日は道中で教えていただいた、金刀比羅宮(ことひらぐう)に行ってみようか。

国道32号を南下し、琴平町。
一帯は田畑広がる穏やかな農村風景だが、看板に従って参道の方に進むと、道路は石畳となって土産屋や駐車場の看板、それに付随する案内員の方々が現れる。

「よーし、上ってみようか1,368段!」

“こんぴらさん”の愛称で親しまれる金刀比羅宮の最大の特徴は、象頭山沿いの長い石段にある。
その数は奥社までで1,368段と全国でも屈指。参道は土産物市場から始まっており、
そこから正門をくぐって緑に囲まれる境内へ…と、景色の移ろいを楽しみながら上ることができる。

さすが全国に散らばる金毘羅さまの総本社というだけあって、石段は美しく整えられており、上りはじめの市場あたりこそ傾斜はキツいものの、正門をくぐってしまえばその後は比較的なだらか。まだ9時ごろと朝早いこともあり、人通りも少なくのんびりと歩を進められた。

本社には30分ほどで到着。金刀比羅宮の御祭神は大物主神…海の守り神とされており、
そのためか内陸にある神社なのに大量の船舶にまつわる奉納品が陳列されている。
ご縁を結んだ船は漁船から軍船までとさまざま。神社に“ミサイル艇はやぶさ”とか書いてあるのってどうなんだ。

本社までで785段。その裏手からさらに奥社まで続く石段を上り、10時ごろには全段上り切れた。

「ところどころはキツかったけど…金華山や大山神社に比べたら、全然マシかな~」
やっぱり石段で整備されているっていうのは、偉大なことである。

さて。伸びをすれば、少し早い腹の虫が鳴いてくる。
香川といえば…やっぱ“アレ”ですよね。
涎を分泌させながら、石段をトントンと下っていった。

~~
先ほどまでの喧騒から離れて、人気のない山間へ。徳島との県境も近くなるほど入り込んでいったあたりで、お目当てのものが見つかった。

山奥のうどん屋『山内』。
なるほど近隣住民の話題に上っているだけあって、こんな場所なのにお客さんが多そうじゃないか。

400円のぶっかけ大を注文(小は300/特大は500円)。
それにゲソ、とり天、牛肉コロッケを入れて740円を支払い、席に着く。

揚げ物デッケェな、オイ。
お世辞にも新しいとは言えない店内は薄暗く、テーブルも学食で見るようなものが多い。それでも背中からは、「ご注文は?」「アツアツぶっかけ大で!」という接客の声がひっきりなしに聞こえてくる。
この安さだし、やっぱり香川県民はうどんが大好きなんだろう。

これで味も旨けりゃ言うことナシなんだろうが…。
実は私、そば派である。
ハッキリ言って、いままで好き好んでうどん屋に入ったことなど一度もない。
「さぁ、そんな俺に旨いと言わせてみせろ、香川ァ!!」

どんぶりの中に箸を突っ込み、太麺を引きずり出して汁ごと口の中へすすり込む。腔内へ広がる出汁の旨味。いい具合のところで噛み切ろうと門歯を麺に食い込ませた途端、
“プルンッ”

「なっ、」
なんだこの弾力はぁああ~~~!!
プルンっていったぞ、プルンッって!
その未だかつてない感触を確かめるように、今度はそれを咀嚼してみる。
「なんって歯ごたえなんだ…!」
簡単にはやられまいという、太麺の声が聞こえるようである。だが、ひとたび切れ目を入れれば歯はすうっと麺を貫通し、例のプルンッという食感を腔内に響かせる。
いままでうどん嫌いの要因となっていた、あのパサパサする不快な抵抗力が全くない!

これが、これが……コシかぁあああああ!!!

生まれてこのかた25年、初めてうどんの“コシ”ってやつを知った気がする。
うめぇ! うめぇようどん!
“日本人としてこれは知らにゃ損だ!”

県民たちに混じりながら、ズルズルズルズルと麺をすする音で店内を埋め尽くす。その耳心地の良い音に心を傾けていると、5分も経たずにどんぶりは空になってしまっていた。