愛知編 日本列島

文・写真/侍ライダー 木村峻佑

島にある神社として親しまれる八百富(やおとみ)神社や、複合リゾート施設・ラグーナテンボスを東へ通り過ぎ、蒲郡市から海沿いに豊川市へ入ったあたりに、問題の場所はあった。

この先、日本列島である。

工業地帯のはずれに整備された緑地。
その名も『日本列島公園』だ。
なんでも、日本列島のミニチュアを庭園風に表現してあるとのこと。寂しげな面持ちのゲートに不安を覚えつつも、興味本位で入ってみることにする。

園内には各都道府県花を表したプレートが随所に置いてあり、探してみるとちゃんと47都道府県分あるようである。位置関係も…ある程度は合っている。
そのプレートの近くには各地の民謡などが刻まれた石も置いてあった。たとえば徳島だったら、“阿波よしこの”とか、香川だったら“金毘羅船々”とか。

「こんぴらさん、登ったなぁ。懐かしいなぁ…」
と、まぁまぁ思い出には浸れるのだが。

この公園、歩けども歩けども、ほぼそのプレートと民謡しか置かれていない。ミニチュアはいずこか…?

根気強く探索してみると、愛媛にミカンのベンチがあったり、福井に東尋坊のモニュメントがあったりした。
そうそう、ここも見てきた! この六角形になる岩の柱状節理は、世界有数なんだよねぇ~。

東京にはおそらくビル群を模した石柱と、その向こうに富士山と思われる山が設置されている。
実際、東京からも富士山は見えるし、この辺りは賛辞を送っていいポイント…なのではないだろうか。

沖縄から北海道まで公園を歩いてみたが…。
「何もねぇ!」

見つけられたのが、東京のビルと富士山と東尋坊とミカンと青森のリンゴって! もうちょっと頑張ってもいいんじゃないだろうか。
地図を見ても、公園の形はまったく日本列島っぽくない。…というか、沖縄が北にあって北海道が南にある。なぜだ…?

日本列島の名を語るからには、もうちょっと気合を入れてほしかった。
「例えば、鳥取砂丘の砂場とか琵琶湖の池とか、別府の足湯っぽいのとかさ~~!」
私に監修させてくれれば、もっと良い物が作れただろうに…!

ブツブツ言いながら来た道を戻っていると、自分が全都道府県分、足を止めて文句を言っていることに気付く。

「ああ…そういうことなんだろうなぁ…」
この先、残すところは、行ったことのある静岡、山梨、神奈川、そして東京。
もう、私は全都道府県を踏破していることになる。全ての都道府県で文句を言えるぐらい、日本を見てきたことになるのだ。
それは誇らしいようで、……ちょっぴり寂しい。

今までは、地図を通して“ここはどんな景色なんだろうか”と想像することしかできなかった。北海道や九州をGoogleマップで見て、「ここは自然が多そう」「ここは絶景がありそうだ」とか、テントの中でニヤニヤしていたのが懐かしい。

それがいまでは、もうほとんど想像の余地すらないほど、日本列島を知ってしまった。「案外大したことなかったな」って思ったり、「やっぱり想像した通りの絶景だ」って思ったり。いろんな“初めて”を味わいながら。

そんな楽しい日々も、もう少しで終わりなんだろうか。

「ここが日本列島なら…この川の向こうは、大陸かなぁ…」
正直、企画倒れ感のある日本列島公園。
だが、私にとっては、大事な何かに気付かせてくれた場所のようだ。
未知を知ることの感動と、知ってしまうことの残酷さを噛みしめながら、ちょっぴり頭を垂れて、その場を後にした。