連載 この夏、ヤマハマリンクラブ「シースタイル」で“海遊び”デビューする!
その2「船舶免許講習に通う!」編 
「海の男」への道は1日にして成らず。
でも3日あればなれる……はず?

取材協力/ヤマハ発動機株式会社
文/河西啓介(EIGHTH編集長) 写真/世古幸子

前回のリポートでは、これまで“マリンアクティビティ”に無縁だったアラフィフ男……ことEIGHTH編集長カワニシが、ふとしたきっかけからその面白さに気づき、「船舶免許を取ろう」と決意するまでをお届けした。果たして免許取得への道のりは如何に? リアルガチなレポートです。

まずは「小型船舶2級」を目指そう

「ボート免許取るぞ!」と決意したものの、まず何をしていいかわからない……。そこで「ヤマハボート免許教室」のウェブサイトを見てみたところ、まずボート免許には小型船舶操縦士の「1級」と「2級」があり、どちらを取るか決める必要がある。どう違うの?と調べてみると、運転できるボートの大きさは「総トン数20トン未満/プレジャーボートは長さ24m未満」とどちらも同じ。というか20トン!長さ24m!ってそんなの操縦できるのか、俺? だって長さ24mって、学校のプールぐらいあるよ(汗)。

で、1級と2級の違いは「航行区域」だった。1級は「すべての水域」に行けるのに対して、2級は「海岸より5海里(約9km)以内」。つまり2級では外洋には出られないということだ。たとえば東京湾から伊豆大島へは行けない、のである。とはいえ、今のところ伊豆大島まで行く予定のない自分としては「2級」で十分と判断。じっさい入門免許としてほとんどの人が選ぶのは2級で、試験も1級はかなり難しそうだし。もし将来的に「もっと遠くへ行きたい」と思えば、そのときにステップアップすればいいだろう。バイクでいえば中免取っていつかは大型二輪、みたいなことか。

2級を取る、と決めたら次はスケジュールだ。最も一般的な「レギュラーコース」では3日かければ免許が取得できるという。学科講習1日、実技講習1日、試験1日(国家試験なのだ!)、である。そのほか学科講習をインターネットで“自習”することで日にちを2日間に短縮する「スマ免」、さらに実技講習と試験を1日で行ってしまう「スマ免1日コース」という荒業(?)もあるという。だが、「自信はないが、時間はある」自分としては迷いなくレギュラーコースを選ぶことに(いっぽう自信はあるけどヒマはない、という方は「ヤマハボート教室」のウェブサイトを見て検討してみてください)。 ちなみに「2級レギュラーコース」の取得費用は99,000円。正直、3日と10万円以下でボート免許が取れるなら、コスパはいいな……と思った。たとえばクルマやオートバイの免許と比べればハードルはずっと低い。ちなみに講習や試験は土日も行っているから、平日休みを取らなくても大丈夫。大人にとってはそこも大事なポイントだと思う。

船舶免許講習に申し込むと送られてくるテキスト……とロープ??

舐めてかかるな!学科講習

さて、2級レギュラーコース!と決めたらさっそく申し込む。インターネットでも電話(ヤマハボート免許センターのフリーダイヤル)でもOKで、そこで講習日と試験日を決める。僕は学科、実技、試験をほぼ1週間間隔、都合2週間で取るスケジュールに。講習、試験会場はいくつかあって選べるのだけど、僕は3日とも都内から行きやすい「羽田試験場」にした。申込みを終えると数日で教本と問題集(とロープ!)が送られてきて、さあ、やるしかない‼

そして迎えた学科講習。京急線「大鳥居」から15分ほど歩いた、多摩川沿いにある「羽田試験場」に朝9時集合。長机の並ぶ「教室」には10名ほどの受講者が。講習は9時から夕方5時まで、1時間の昼休みを挟んでびっちりと行われます。正直、もう少しユルいのかな……と思っていたら甘かった!

学科および実技講習を受けた「羽田試験場」。大鳥居駅から歩いて15分ほどの多摩川沿いにある。

教本1冊ぶんを半日で覚えるのはかなり大変。なにしろ海上ではクルマやバイクで覚えている「道路交通法」は通用しないので、まっさらな状態からスタート。「船舶操縦者の心得」から始まり、海上での法規、運航の方法、船の構造や特性などなど。

先生は予備校よろしく「ここ大事から覚えてくださいねー」などとポイントを押さえて教えてくれるのだけど、とにかく覚える量が多いので付いていくのがタイヘン(汗)。こんなに真剣に授業聞いたのは中学生以来かも……。いやあ、舐めてました。個人的には「海里」や「ノット」を使った航海計算、気象や天気図の見方などが難しかったかな。夕方、すべての授業が終わる頃にはアタマの中が疲労困憊だった。って、ふだんどれだけアタマ使ってないのか……。

朝から夕方までみっちりの学科講習は想像以上に厳しい。昼休み後には睡魔とも戦わなくてはならない……。

ちなみに本番の学科試験は、マークシート式で50問出題され、65%にあたる32問以上の正解が合格ライン。なんだか10代の頃、原付免許試験を受けたときのことを思い出す。先生からは「家に帰ってからちゃんと復習しておいてくださいね」と言われたのだけど、この時点では「まあ、なんとかなるだろう」という気持ちだったのは確か。それが後々、甘かった……と思うことになるのだけど。

とにかく「声出し」の実技講習

さて、羽田試験場への通学2日目は「実技講習」。いよいよ海に出る!ということでやはり緊張が……。お天気は曇りで、風もさほどなく、コンディション的にはまずまずかなと。教習はお昼を挟んで午前、午後に分けられ、やはり朝から夕方までびっちり。一艇のボートに教官1人、生徒は2人または1人(この日は)が乗り込み教えてもらうのだが、僕は1人で教えてもらうことになり、まさにマン・ツー・マン。(当たり前ですが)まったく気は抜けない。

教習で使用したのは4〜5人乗りの小さなボート。
70、80年代のクルマを思わせる簡素なコクピットはなんだか懐かしさを感じた。試験でも同じボートを使用する。

教えてくださる教官(認定インストラクター)の小林はるみさんは、オートバイにも乗るというカッコいい女性。が、その姿に羨望の眼差しを送っている余裕などなく、ライフジャケットを身に着け桟橋へ。まずは出航前の船体および操縦席の点検から。船体の外板、プロペラ、エンジンの様子、ワイパーやホーンの作動などをチェックしていくのだが、その際にひとつひとつ「船首よし!」「プロペラ点検よし!」「ワイパー作動よし!」と大きく声を出すことが必要。これはクルマの教習とは違うところで、いやがおうにも緊張感が高まる。思わず声が上ずったり、言葉を噛んだり、アラフィフのおじさんが情けないほど舞い上がってしまうのである。

船尾部分に搭載されるエンジンを点検。キャブレターを備えた4サイクル。これもなんだか懐かしい。

ただ実際に走り出すと、運転そのものはクルマやオートバイと似ている。アクセル(レバーを手で操作する)で速度を調整し、ハンドルを切って進路を変えるという点では同じだし、曲がるときに船体を傾けるのはオートバイで「リーンする」感覚だ。ちなみに進路を変更することを船舶用語では「変針」と言う。教官に「では、あの目標に向かって進んでください」と指示されたら「はい、○○に向かって変針します!」と言い、進路変更が完了したら「変針終了しました!」と伝える。その間も前後左右の安全確認は欠かさない。「左右よし!後方よし!」と、顔をあちこちに向けながら確認しまくる。「道」が存在しない海上では、とにもかくにも安全確認が重要なのだ。

いざ海に出ると、右も左もわからず戸惑う……。海上に浮かぶ標識があるんだなーと、あらためて気づいた。

思わぬ伏兵? 船酔い……

ただし船には「タイヤ」と「ブレーキ」がない。それゆえ苦手なのは低速で針路を変えること、そして“止まる”こと。この2つを組み合わせてコントロールしなきゃならないのが「人命救助」。これは“溺れた人”に見立てたブイを海に投げ、船をコントロールしてそのブイに近づき、救い上げるというものなのだが、これがかなり難しい。ブイから離れ過ぎたり見失ったりしないように、とはいえぶつかったりプロペラに巻き込んだりしないように、アクセルとハンドルを微妙にコントロールしながら近づき、救い上げる。

運転操作自体はクルマと似ている。速力は左手で握っているアクセルレバーでコントロール。
とにもかくにも安全確認が大事。後方よし!と声を出さないと確認していると認められない。
海上に投げ入れられたブイを溺れている人に見立て、救い上げる「人命救助」。慎重に船を近づける。
獲ったどぉ〜!状態なのだけど、じつはもう船酔いしているのでかなりツライ。

もうひとつは「着岸」。つまり桟橋に船を着けること。潮の流れ、風の強さや向きを考えながら、手前でエンジンを止め、最後は惰性とリバースギアを上手く使って目的の場所に着ける。クルマでも「駐車が苦手」という人は多いと思うけど、まったく同じである。だが出航した以上は着岸しなくてはならない。つまり免許取得後の実践でも必ずついて回るテクニックだし、試験においても重要な課題なのだ。

ブレーキのない船ゆえ着岸は難しい。手前でエンジンを切り、惰性で桟橋に近づいていく。
着岸したら係留。ロープワークも覚えなくてはならないのだ。焦る、焦る……。

そして午前、午後にわたる実技講習が終了。時間の兼ね合いで、同じことを何度も繰り返して練習することはできないので、基本はその場その場、一発勝負で覚えていくしかない。とはいえ前述したように、「乗りものの運転」という意味では、日ごろクルマやバイクの運転をしている人であれば、なんとかできるんじゃないかな、と思った。あとは落ち着いて、手順を間違えず、確認を忘れずに、できるかどうか……。

あ、あとひとつ不安なのは「船酔い」……。船を走らせているときはいいのだけど、途中で船を止めて説明を受けたり、極低速で運転していると、ちゃぽんちゃぽんと船が揺れ、結構気持ち悪くなってしまった。途中で思わず「いったん岸に戻っていいですか……」とお願いしようかと思ったぐらい(汗)。試験本番では気合で乗り切れるのか、はたまた緊張のあまり余計に酔っちゃったりして……と思うと不安である。

とはいえ学科講習、実技講習が終わり、残すは本番、国家試験! 決して「自信あり」とはいえないが、こちらも人生の荒波を越えてきた(?)アラフィフオヤジである。その経験と火事場の馬鹿力で、なんとか合格するぞ〜!と誓い、羽田試験場を後にしたのだった。

(試験当日編に続く)

じつは運転以上に苦労したのがロープワーク、もやい結び、まき結び、いかり結び、クリート止めなど
7種の結び方を覚えなくてはならない。
学科および実技講習でお世話になった認定インストラクターの小林はるみ教官。
ときに優しく、おおむね厳しく、指導してくださった。

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