自転車、キャンプ、旅……。楽しみながら社会貢献できるエンタメをつくっていきたい!

モデル/ライター 山下晃和

文/松崎祐子

モデルでありながら、乗りモノ、アウトドア系メディアでライターとしても活躍する山下晃和さん。今年、自身で主催した自転車とキャンプを組み合わせたイベントでは3,500名ほどの来場者があったという。そこにたどり着くまでには、これまで経験した数々の旅と人との出会いがあった。

旅の原点はオートバイでの日本一周

自転車、オートバイ、アウトドアなど様々なメディアで活躍されている山下さんですが、乗りものとの出会いは?

バイクに乗り始めたのは大学生の時です。周りにバイクに乗っている友達が多くて「ツーリングに行こうよ」なんて盛り上がって、それで僕も免許を取りました。初めて買ったバイクはホンダSL230。オフロードバイクです。その頃はヤマハのTWとかが流行っていて、街でオフロードバイクに乗るのがカッコよかったんです。ファッション誌でもオフ車を取り上げたりしていて、僕もどちらかというとファッション的な感じで選んでいました。でも、バイクの楽しさを知ってから“もっと遠くに行きたい”と思い、林道に走りに行き、キャンプにも行くようになりました。

キャンプをしながら未舗装路の林道を走るツーリングが好き。

それが旅の原点?

僕の旅の原点は、オートバイで日本一周したことですね。奄美大島の原生林を通る中央林道を走ってみたくて、フェリーで約38時間かけて奄美大島に行ったんです。帰りはずっと下道を使ってバイクで東京に戻ってくるという日本半周の旅。距離は2,000キロくらいかな。ゆっくり回ったので1ヵ月ほどかかりました。その後、ヤマハTWでも日本一周しています。

モデルやライターの仕事を始めたのはいつ頃から?

モデルは19歳から、文章を書くようになったのは24か25歳くらいだったと思います。それまでファッション誌やバイク雑誌にはモデルとして出るだけだったんですが、ある時ファッションモデルとしてバイク雑誌編集部に営業に行くと、某雑誌の編集長から「原稿も書けるなら仕事を頼めるんだけど……」と言われ、それがきっかけでした。その頃、TWで日本一周していたんですが、運良くヤマハさんの目に留まり、Webで記事を書かせてもらえるとになりました。

自転車で世界を走る。ニカラグアで衝撃のトラブルに遭遇!

自転車では海外にも行かれたそうですね?

実は学生時代、将来は旅行関係の仕事に就きたいと思っていて、大学でスペイン語を専攻していたんです。旅行の専門学校にも通い、ツアーガイドの資格も取ったんですが、就職活動の時期にアメリカのテロ事件があって、旅行関連への就職が難しくなってしまったんです。そんなことから、旅をしながら習得したスペイン語を使って会話をしたいという思いがずっとありました。それが自転車での海外ツーリングへ向かわせたんだと思います。自転車のスピード感は、現地の人々とふれあうのにもいいかなと思いましたし。

どんな国へ?

最初の海外自転車旅は28歳のとき、アジアです。沢木耕太郎さんの小説『深夜特急』に出てくる、チョンキンマンションと呼ばれる安宿街が香港にあるんですが、そこを出発点にしたくて香港からシンガポールまで。約半年間で7,500キロ走りました。

自転車で7,500キロ!?すごい距離ですね。

でも半年かけてですから、割とのんびりした旅です。その後、スペイン語を話したいという当初の目標を叶えるために中南米に行ったのが30〜31歳にかけて。メキシコシティからスタートしてコスタリカ。そこから飛行機でペルーへ飛び、ボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチンと自転車で走りました。これも約半年で7,000キロくらいです。

スペイン語を使いたくて世界をめぐる自転車旅へ。これはボリビアのチチカカ湖近くのアルティプラーノを走っていたとき。

道中、トラブルはなかったんですか?

いちばん大きなトラブルと言えば、ニカラグアで盗賊に襲われてカメラとお金を盗まれたこと。ショックでしたが、後から考えると、貧しい人たちが住むエリアも多い中南米で、お金を持っていそうな日本人が通ったら襲われても仕方ないなと。まあ、僕はそんな持ってなかったんですけど(笑)。でも、その時に助けてくれた人たちも多くて、ケガした僕をクルマで病院まで送ってくれたり、「警察に行った方がいいよ」と連れて行ってくれたり、基本は優しい人が多いんだなと。

海外の自転車旅でご自身に何か変化はありましたか?

「自分を変えてやろう」と思って行ったけど、結局はあまり変わらなかったかな(笑)。自転車の旅って、基本ヒマなんですよ。ペルーなんてずっと砂漠が続いてほとんど人なんていないし、その間はペダルを漕ぎながらひたすら自分と向き合っていました。とはいえ旅を通じて「スペイン語を話したい」という目的は叶えられて、それがうれしかったし楽しくもありました。

バングラデシュの小さな集落で休んでいたら、村中の人が集まってきた。自転車で旅してきていちばん笑った国。

自転車×キャンプのイベントを主催しています

「乗りモノ×旅」を楽しんでいる山下さんですが、自転車、バイク、クルマで旅の違いはあると思いますか?

僕の場合「旅が好き」というのがベースにあって、乗りもの自体にはそれほどこだわっていないんです。その時々でフィットしたものを選んでいるだけ。中南米のようにデコボコ道をゆっくり行く旅なら、太いタイヤを履いたランドナーがいいなとか、サーフィンに行くなら荷物が積めて砂浜でもスタックしない四駆とか。「この乗りものじゃなきゃ!」っていうのはないんです、クルマもバイクも自転車も好きなので。

愛車はスズキ・ジムニー。サーフボードを積んでにサーフィンにも出かける。

今年の秋には「自転車とキャンプ」を組み合わせたイベントを開催されたそうですね。

『BIKE & CAMP』という旅フェスティバルです。今回で3年目、5回目の開催になりました。今年は新型コロナウィルスの影響で当初の予定より延期しましたが、10月31日〜11月1日の2日間、茨城県つくば市の「つくばワイナリー」で開催して、約3,500名の方にお越しいただきました。

自転車とキャンプをテーマにした旅イベント「BIKE&CAMP FES20」のオープン時には長蛇の列が。ファミリーやカップルなども多かった。

それは大盛況でしたね。どんな内容のイベントなんですか?

このイベントを始めた当初は、自転車でキャンプを楽しむ人がまだまだ少なかったので、自分たち自身が自転車で集まってキャンプをしながら楽しいオフミーティングができたらいいね、という軽いノリからスタートしたんです。いまではキャンプはもちろん、自転車や用品メーカーの出展、試乗、キャンプ料理のワークショップやオークション、そして今年は花火もやりました。ありがたいことに年々参加者は増えてきています。

つくばワイナリーの夜空に浮かぶ花火。この日はたまたまブルームーンだったので月とのコラボになった。

楽しそうなイベントですね。そのイベントはすでに山下さんのライフワークのひとつだと思いますが、これからやっていきたいことはありますか?

『BIKE & CAMP』ではチャリティを行っていて、オークションの売上やレンタルヘルメットなどの代金をNPO法人「海外に子供用クルマ椅子を送る会」という団体に寄付しています。実は、自転車とクルマ椅子って共通のパーツが多いんです。そういう風に楽しみながら社会貢献をしていけたらいいなと思っています。いままで1人で好き放題遊んできたので、今後は人を楽しませるエンターテインメント性のあることを考え、世の中に還元できるようなことができたらいいなと思っています。

キーンと冷えた朝。真っ赤に染まった空。各々が焚き火を興し、朝食の準備をする。キャンプ泊のゲストは130名だった。

Akikazu Yamashita 氏
1980年生まれ、東京出身。タイクーンモデルエージェンシー所属。
雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインにトラベルライターとしても活動。
オートバイでの日本一周や、自転車でのアジア、中南米など22カ国の海外旅を実現。
世界を旅した時の旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。